私立Zenプロ学園。
ここは治安が悪い事で有名な学校。
一部の人からはスラムとか言われてる。
私、おしるこは公立も受験したんだけれど、滑り止めとしてこの学校も受けたんだ。
そうしたら残念な事に公立は落ちちゃった。
そんなわけで、この春から私はZenプロ学園の生徒になるの!
「制服……地味じゃない?」
そんな事を幼なじみのさとみが言っていたっけ。
でも私は美人じゃないし、ちょっと地味なくらいがちょうど良いかなって思っているんだけどね。
わくわくしながら校門を通る。
あぁ、今日から私はここの生徒なんだ!
友達が出来るといいなぁ。
そんな期待と不安の中、しばらく歩くと人だかりが出来ているのに気が付いた。
あっ、あそこにクラス分けの紙が貼ってあるんだ。
えっと……私は……Z組!?
噂で聞いたことがあるの。
アルファベットの最後の文字のZ組。
ここは落ちこぼれや、問題のある生徒ばかりを集めたクラスらしい。
少し悲しい気持ちになったけれど、せっかくの高校生活だから楽しまなくちゃ!
「緊張するなぁ……。」
そっと教室のドアを開けた。
「コメントしないリスナーはクソなんだよ!!!」
いきなり大声で話す男の人が、教卓に乗って演説をしている。
何の話をしているんだろう……?
周囲のクラスメイトは完全に無視をしているようだった。
黒板に書かれている自分の席を確認したら、窓側の後ろから二番目みたい。
一番後ろの席の人はもう座っていて、堂々と分厚い漫画雑誌を読んでいた。
「あの……私、前の席のおしるこっていうの。よろしくね。」
「そうなんですか。こちらは初見挨拶とか特に無いんですけれど、よろしくお願いします。」
そう言うとまた漫画を読み始めた。
すごく漫画が好きな人なんだなぁ。
顔はよく見えなかったけれど、一体どんな人なんだろう。
しばらくするとホームルームの開始を告げるチャイムが流れた。
『その星、取って欲しいな!』
随分と変わったチャイムだった。
でもそれはどういう意味なんだろう……。
考えてみたけれど、やっぱりよくわからない。
「今日からこのクラスの担任をする、すずきだ!新入生のお前ら!間違ってもウンコは食うなよ!」
ひどく下品な挨拶だった。
こんな人が先生で、この学校は大丈夫なのか心配しちゃう。
その後、体育館に集まって行われた入学式は散々だった。
「あっ、えーっ……Zenプロ学園に……ようこそー!校長の……野良犬ね……ニャーだよっ。」
もごもごと話す校長先生の話は聞き取りづらいし、内容は薄いのにとっても長くて、後半は寝そうになっちゃった。
教室に戻ると一人一人の自己紹介が始まった。
順番が来たら椅子から立って話すらしい。
こういうの緊張しちゃうから苦手なのに。
「すぐに何かを忘れちゃう、むまっちゃんです。よろしくお願いします。 」
「は?挨拶?しね。僕の名前はるんたって言うからな。」
「綾瀬組、組長、綾瀬飛鳥っていいます。僕としては組長って呼ばれると嬉しいです。」
「えっ……どうしよう。なんて言えばいいん?たけけです……。」
「ロリ!?(☆∀☆)あっ……違った。チェイサーです。」
「今日はちゃんとに服を着ている拇にゃんにゃん……またの名をユビニスト。」
「森の中からこんにちは!占いをする魔女、魔女占やよいだよっ♡えへへっ!」
個性的なクラスメイトたちの挨拶が終わり、とうとう私の番が来ちゃった。
どうしよう!緊張しちゃう……!
「あっ、えっと、私の名前はおしるこです!ゴマが大好きで、朝ご飯にはゴマを2003粒食べます!よっ、よろしくお願いしますっ!」
あぁ、もう!こんな挨拶するはずじゃなかったのに!恥ずかしいっ!
そして最後は、さっき漫画を読んでいた人だった。
好奇心から気になって後ろを見てみる。
ゆっくりと椅子から立ち上がったその人は、こう言った。
「僕の名前はぜんざいと申します。何を言われてもいいですが、ハゲだけは許しません。」
窓からの風に揺れる綺麗な黒髪。
世の中のすべてをバカにしているような目。
その瞳を強調させるかのような泣きぼくろ。
私はこの瞬間、恋に落ちた。
コメント